枯れないように水をやろう2

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『終末のフール』 伊坂幸太郎

終末のフール 終末のフール

世界が終わる前の、叫びとため息。8つの物語。

群像劇が好きです。

Aの行動でBの行動が決まってしまったり、

Cがそのとばっちりの影響を受けたり。

8つの短編は、そこまでの影響を受けあうものでないけれど、

確実にそれぞれの人物が影響を受けあっているものがある。

「生きる」

前向きな人物も、臆病な人物も、絶望に打ちひしがれた人物も。

8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡すると発表された5年後。

仙台のあるマンションに住む人々の8つの生き方。

世界滅亡といえば、ありふれたテーマ。

そんなありふれたテーマだけど、一番人間の本質が見えるテーマだと思う。

明日世界が滅びるとしても 今日、君はりんごの木を植える

開高 健という人は、この言葉を好んで使った。

マルティン・ルターという人の言葉だ。

もっともルターは、「君」でなく「私」としたらしいけど。

とにかく、そういうことだ。

この物語は、そういう話なんだと思う。

ただ、その一言で済ましてしまうなら世にありふれてしまっている。

だから、小説っておもしろくて奥が深い。 

『ダ・ヴインチ』で伊坂さんは、

世界が終わるとしても小説を書くでしょうね

と語っていた。

僕も世界が終わるとしても、おもしろい本を読みたいものだ。

冬眠のガールの美智ほど読もうとは、思わないけど。

絶望ってものは、自分に何も生まないと思う。

じたばたして、足掻いて、もがいて。

生き残るってそういうのだよ、きっとさ

『終末のフール』のラストにこんなセリフが、あった。

本当の意味で強い人たちは、そうやって生きていくのかもしれない。

あの空が落ちてくるその日まで。